薬局と病院とで、薬剤師の1日がどう違うのか知りたいなあ。進路を選択するうえで参考にしたい!
未来ある薬学生のみなさまへ!臨床実習を経たあなたはご存じかもしれませんが、薬局と病院とで、同じ薬剤師でも1日の時間の流れや業務が異なります。
そこで、薬局と病院両方とも勤務経験のあるわたしが、以下の内容についてまとめました!
- 薬局薬剤師と病院薬剤師の業務内容と1日の流れ
- 薬局薬剤師と病院薬剤師のメリット・デメリット
薬局と病院の薬剤師がどう違うのかをご理解いただき、今後の進路の選択にお役に立てたらなと思います。
勤務した薬局と病院の概要
薬局の概要
総合病院の門前薬局だったため、幅広い診療科の処方を経験することができました。
立地・規模 | 総合病院の門前薬局 |
応需科目 | 内科、外科、婦人科、精神科、神経内科、循環器内科、腎臓内科、透析科、呼吸器内科、糖尿病内科、消化器内科、整形外科、歯科、泌尿器科 |
処方せん枚数 | 約100~150枚/1日 |
薬剤師数 | 10名(常時外来調剤をしているのは、5~6名ほど) |
夜勤 | 週1回夜間まで開局しているため、月に2回ほど8:45~20:00まで勤務 |
自分の仕事 | 医薬品の発注・在庫管理業務 在宅業務(個人宅2~3件、グループホーム1件10名) |
病院の概要
薬を使って治療するのがメインである内科病棟の担当は大変だったけど、今となってはとてもいい経験でした。
立地・規模 | 市内の中核病院、急性期・慢性期病棟のあるケアミックス病院 |
応需科目 | 総合内科、外科、産婦人科、神経内科、循環器内科、腎臓内科、透析科、糖尿病内科、消化器内科、整形外科、小児科、泌尿器科、感染症内科、発熱外来、救急外来 |
処方せん枚数 | 入院処方せん(注射処方箋を除く)約100枚/1日、入院注射処方せん 約350~400件/1日 基本的に外来処方せんは受け付けていません |
薬剤師数 | 21名 |
夜勤 | 24時間救急受け入れのため、月に3回ほど8:45~翌朝8:45まで当直勤務 |
わたしの担当した病棟 | 総合内科、感染症内科、糖尿病内科、腎臓内科、透析科、小児科、整形外科 |
各時間帯ごとの業務内容
業務内容を朝、日中、昼休憩、夕方と区切ってまとめてみました。さらに忙しい度合を星5段階であらわします。一個人の見解ですので、参考にまでにみてください。
朝の業務
薬局 ★
開局前の準備(機器の立ち上げ、薬局内の掃除)、医薬品の発注業務をします。新人の頃は、先輩より早く出勤し、率先して準備を行っていました。朝は患者がほぼいないことが多く、ゆっくりと時間が過ぎていきます。
暇なときは、控室でお茶を飲んでいることもありました。
病院 ★★★★★
入院患者の情報収集、退院患者の対応、病棟常備薬のチェックをします。退院時間が10時と決まっていたため、退院患者が多いと、あっという間に時間が過ぎます。たった1時間で「1日分の体力を消耗したのでは」と感じるくらい、働いた日も。
入院患者の情報収集とは
昨晩から今朝までに緊急で入院した患者の情報を拾ったり、急遽退院となった患者の情報を拾います。
退院患者の対応とは
退院する患者に退院処方を渡したり、退院以降に使用してもらう薬の説明をします。
病棟常備薬のチェックとは
病棟に常時配置されている医薬品がどの程度使われたのか把握し、不足分を補充します。
退院患者が3人以上いると、忙しすぎる!
日中の業務
薬局 ★~★★★★★
主に外来業務、在宅業務に分けられます。外来の処方せん枚数や勤務薬剤師数によって、忙しい度合が変化。処方せんの受付は日中に集中します。わたしの感覚ですが、例えば、薬の待ち時間が5~10分程度ですと、忙しくありません。一方、30分以上になってくると、そこそこ忙しいなという感覚です。
外来業務とは
外来患者から処方せんを受付、調剤、鑑査、服薬指導をします。
在宅業務とは
介護保険の「居宅療養管理指導」または医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導」のことを指します。簡単に言うと、薬剤師が個人のお宅や施設に薬をお届けし、薬の管理や説明をする業務のことを言います。
チームプレーの外来業務とは違い、在宅業務は1人で行う仕事です。そのため、薬剤師の力量が問われます。
病院 ★~★★★★★
主に入院調剤業務、入院患者の対応、病棟業務に分けられます。処方せん枚数や入院患者数によって、忙しい度合が変化。担当する病棟は、慢性期病棟よりも急性期病棟のほうが、とても忙しいと感じます。
入院調剤業務とは
入院処方せんに基づき、調剤、鑑査します。患者への服薬指導は、病棟業務に含みます。
入院患者の対応とは
入院した患者が持参した薬の内容を鑑別し、医師に報告。入院中使用してよい薬の確認を行い、必要に応じて再調剤します。
病棟業務とは
入院患者の情報を拾い、処方せんの内容を把握。必要に応じて、患者に薬の説明をし、記録をします。また、よりよい医療を提供するため、医師や他のスタッフと一緒に薬物治療の内容について検討します。
病棟チームと調剤チームに分かれて仕事をします。お休み等でチームの人数が少ないと、片方のチームからヘルプを出して助け合っています。
昼休憩の様子
昼休憩は圧倒的に薬局のほうが楽だった!
薬局 ★はなし
至急で自分が対応することがないため、リラックスできました。もちろん、昼休憩中も開局。なぜリラックスできたのでしょうか?それは、みんなの昼休憩中に働く薬剤師を1~2名決めておき、当番でまわしていたからです。
病院 ★★
休憩中でも自分宛てに電話があるため、ゆっくり昼ご飯を食べれることはなく、リラックスできません。また、外来業務が終わった医師が処方する時間帯に当たることも多く、その対応に追われることもありました。
夕方の業務
薬局 ★
医薬品の発注業務、在庫管理業務、閉局作業をします。患者が少なくなる時間帯のため、忙しくありません。
病院 ★★★
必要があれば当直者へ申し送りをし、翌日退院する患者の把握をします。夕方緊急で入院した患者がいる場合、その対応に追われ、残業することがありました。日中ほどではありませんが、やや忙しいかなという印象。
1日のおおかまな流れ~夜勤あり~
1日のおおまかな流れを夜勤ありの長いバージョンでまとめてみました。業務の内容につきましては、「各時間帯ごとの業務内容」に記載していますので、確認ください。
薬局の1日の流れ
夜勤に入れる人が少ないため、ズレ勤務はなく、夜勤のある日は基本的に朝から夜まで働いています。
病院の1日の流れ
当直のある日は、日勤帯から勤務を開始し、翌朝まで病院にいます。当直業務は基本1人で行うため、薬剤師の力量が求められます。
わたしは仮眠をとっていました。何をするかは、その薬剤師の自由です。
必要に応じて、救急外来と入院患者の調剤対応をします。
翌0:00~6:00の間は安静時間(睡眠OK)ですが、連絡があればその都度対応します。
薬局と病院のメリット・デメリット
薬局と病院のメリット・デメリットをまとめました。一個人の見解のため、参考までにご覧ください。
薬局のメリット・デメリット
メリット
- 閉局日はお休みなので、それに合わせてスケジュールが組みやすい。
- さまざまな患者層と接するため、コミュニケーション能力が磨かれる。
- さまざまな診療科の処方を受け付けるため、幅広い病気や薬の知識を得ることができる。
デメリット
- 外来業務の際は、患者をお待たせしないようにとの思いで、常に時間を気にしていた。
- カルテを確認できない為、処方せん、お薬手帳、過去の履歴、患者からの聞き取りをもとに、病気や医師の処方意図を推理しなければならない。
- 直接医師に連絡をとることが難しく、時間をかけて医師と処方の議論をすることができない。
- 薬剤師だけの世界なので、他の医療職種の方と知り合う機会が少ない。
病院のメリット・デメリット
メリット
- あらかじめ、カルテの情報を把握した上で、調剤や服薬指導ができる。
- 院内の医療スタッフとたくさん知り合いになれるので、交友関係が広がる。
- 医師と連絡がとりやすいため、薬剤師のほうから処方提案がしやすい。
- 担当病棟を持てば、その分野の専門性を深めることができる。
デメリット
- 当直業務が体力的・精神的にきつい。
- 24時間救急対応病院であれば、土日祝が休みとは限らない。
- たくさんの医療スタッフと関わるため、名前と顔を覚えるのが大変。
最後に
今回は、薬局薬剤師と病院薬剤師を徹底比較し、リアルな1日の流れを紹介しました。
薬局と病院それぞれにメリット・デメリットは存在します。それを理解・把握したうえで、自分がどんな薬剤師になりたいのか、どんなキャリアを積み重ねていきたいのかを考えましょう。
実際に希望する薬局や病院を見学することで、自分が働くイメージを描けますよ!積極的に足を運んでみましょう。
コメント