花粉症に悩んでいるあなたへ。薬で症状を抑える治療だけでは、症状が改善しないことはありませんか?そんな方に検討してほしいのが「舌下免疫療法」と呼ばれる花粉症の治療法です。
本記事では、舌下免疫療法の基礎知識や治療スケジュール、効果、副作用についてご紹介します。
舌下免疫療法とは
花粉症の治療法は、薬物療法と手術療法、アレルゲン免疫療法の3つに大別されます。このうち最も一般的なのは、鼻水や鼻づまりなどの症状を薬で抑える薬物療法です。しかし、薬の副作用で治療を継続できない方や薬だけでは症状を十分に抑えられない方も見られます。そうした場合に検討される治療法が、アレルゲン免疫療法です。

アレルゲン免疫療法には、注射による方法と舌の下に薬を投与する「舌下免疫療法」の2種類があります。舌下免疫療法を受けられるのは、さまざまな花粉症の中でも「スギ花粉症」と診断された方のみです。スギ花粉のエキスを含む舌下錠を服用し、体をスギ花粉に慣れさせていきます。

治療効果が期待できる量を服用した場合、1か月(4週間)あたりの薬の費用は約4000円です。保険の適用により、自己負担が3割の方は1か月あたり約1200円となります。また、薬代のほかに処方せん料や調剤料、指導管理料、診察代や検査代が必要です。
治療スケジュールと服用方法
舌下免疫療法の治療スケジュールや服用方法について、ご紹介します。
治療の流れは?いつから始める?
舌下免疫療法の治療開始時期は、スギ花粉が飛散していない時期です。6月から10月の間に、受診するとよいでしょう。
スギ花粉の舌下錠には、2000JAU錠(飲み始めの量)と5000JAU錠(治療効果が期待できる量)があります。1週間目は2000JAU錠を服用し、問題がなければ、2週目以降に5000JAU錠まで増やします。その後は、5000JAU錠を3年以上にわたり服用し続ける必要があるため、根気強さが求められる治療法です。
服用方法は?
舌下錠は、舌の下でゆっくり溶けることで、有効成分が口の中の粘膜から吸収されるように設計された薬です。まず、舌の下に薬を1分間置いた後、そのまま飲み込みます。その後、薬の吸収を妨げないようにするため、5分間はうがいや飲食を控えましょう。この方法で1日1回、毎日続けて服用します。
通院頻度は?
初めて舌下錠を服用する際は、医療機関において医師の立会いが必須です。問題がなければ、2日目以降は自宅で服用します。副作用がなく、体調が安定していれば、月に1回から2か月に1回のペースでの通院となります。
舌下免疫療法のメリット・デメリット
以下に示す舌下免疫療法のメリットとデメリットを理解したうえで、治療開始を検討してみましょう。
舌下免疫療法のメリットは?
舌下免疫療法は、初めてのスギ花粉飛散シーズンから効果が現れ始めます。3年以上継続して治療すれば、花粉症の症状を長期間抑え、花粉症の完治も期待できます。また、薬物療法で用いられる薬の使用量を減らすことも可能です。

舌下免疫療法は、大人だけでなく、子どもにも使用できる治療法です。ただし、5歳未満の子どもに対する安全性は確立されていません。そのため、子どもが治療を受ける際は、治療可能かどうかを医師に相談しましょう。
舌下免疫療法のデメリットは?
舌下免疫療法は、3年以上にわたり毎日服用し続ける治療法です。服用し忘れると、十分な治療効果が得られない可能性も。また、治療中もスギ花粉を避ける生活を心がけるなど、花粉症対策を並行して行う必要があります。
治療には継続的な取り組みが求められる一方で、副作用が起こる可能性もあります。次に具体的な副作用について、見ていきましょう。
舌下免疫療法の副作用
舌下免疫療法には、よく見られる副作用や注意すべき副作用があります。具体的には、どのような副作用があるのでしょうか。
主な副作用は?
主な副作用は、口の中の腫れやかゆみなどです。通常は、服用してから数時間以内に症状が改善します。ただし、長時間症状が続く場合は、医師に相談しましょう。
特に注意すべき副作用は?
まれにアナフィラキシーやショックといった重い副作用が見られます。アナフィラキシーとは、医薬品や食物などに対して体が過剰に反応し、突然強いアレルギー症状を起こす病気です。じんましんや腹痛、嘔吐、呼吸が苦しい、顔色が悪いなどの症状が現れます。さらに血圧低下や意識障害を伴うと、ショック状態に至っている可能性があります。前述の症状が見られたら、救急車を呼び、速やかに医療機関を受診しましょう。
副作用のリスクを最小限にするには?
薬を始めてから約1か月間、服用後30分間、スギ花粉の飛散時期には、副作用のリスクが高まります。これらの時期やタイミングでは、より体調の変化に気を付ける必要があります。また、服用2時間前から2時間後までは、運動や入浴、飲酒といった副作用のリスクを高める行動を控えましょう。服用2時間後以降は、運動や入浴、飲酒が可能ですが、副作用に注意が必要です。
異変があった際に、すぐに医療機関を受診できるよう、あらかじめ家族の協力を得ておきましょう。日中で、家族がそばにいる状況での服用が望ましいです。
花粉症と上手に付き合うために

「薬を服用してもスギ花粉症の症状が改善しない」「スギ花粉症を根本から治したい」
そのような悩みを抱えている方には、体質改善を目指せる舌下免疫療法という選択肢があります。舌下免疫療法には、副作用のリスクや治療期間が長いなど、デメリットが存在します。しかし、長期間にわたり症状を抑え、完治が期待できるという大きなメリットもあります。
花粉症と上手に付き合うためには、医師とよく相談し、自分に合った治療法を見つけましょう。舌下免疫療法を検討している方は、スギ花粉が飛散していない時期に医療機関を受診するとよいでしょう。
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